岩手の旅 1日目 八幡平

■ 旅の朝は早い
5:00
疲労は強く、身体が起きることを拒んでいる。
連日の仕事で心身はやられている。
※正確には、自分が自分の心身を追い込んだ結果。

それでも、
楽しみにしていた旅なのだ。
起きよう。

出発前だというのに、
心は仕事の奴隷。

パソコンを開いてメールを1件送信する。
パソコンのツールも整備する。
…我ながら、仕事と日常の境界が曖昧である。

5:40
妻と一緒に出発。
外は涼しい。気温17℃。

東の地平線は、日の出とともにオレンジ色に染まっている。

電車で名古屋駅へ。
そこからバスで名古屋空港へ向かう。

6:55
空港でチェックインを済ませ、
つばさ亭で朝食。
私が選んだのは、かき揚げうどん。

旅の始まりは、まず腹ごしらえから。

7:20
少しのんびりしすぎた。

フライト10分前、安全検査は慌ただしいことに。
くるぶしまである靴は
脱ぐ必要があるらしい。
脱いだはいいものの、
すぐには履けず、
つま先歩きで飛行機へ向かう。

旅の始まりから、
なかなか格好がつかない。

愛知の空は快晴。気温20℃。

7:30
搭乗。
飛行機は間もなく動き出し、
いよいよ離陸。

スマホを機内モードにする。

仕事をするかもしれないと持ってきた会社のスマホは、もう起こさないことにしよう。
週明けには、うんざりするほどの苦情が来るだろう。
責められることもあるかもしれない。

それでも、今回は遮断する。
…と決めたものの、仕事をしなくても、何かしていないと落ち着かない性分。

結局、溜まっていたメモを見ながら、家計簿をExcelに入力する。

仕事から離れるつもりが、別の作業を始めてしまった。

これでは、いつもの休日とあまり変わらないではないか。

■ いわて花巻空港に到着

8:30
いわて花巻空港に到着。
気温19℃。快晴。

荷物を待っていると、
まさかの一番乗り。
期待していたわけでもないし、
大したことではない。

それでも、素直に嬉しい。

愛知とは違う空気に触れ、
旅行が始まったことを静かに感じる。

まずは出発する前に、空港のお土産屋さんで予習をしよう。

お土産を買い忘れても、帰りにここで買えばよい。

そう考えると、少し気が楽になる。

特設イベントでは、地元の高校生が販売する「くもくまーけっと」に出会った。

クッキーにどら焼き、コーヒーを購入。

イベントで接客する高校生たちは、どこか輝いている。

私が高校生だった頃は、こんな輝きは皆無だったな。

若さというものは、それだけで眩しいものなのかもしれない。

■ 今回の相棒はスズキのソリオ

9:10
タイムズカーでレンタカーを受け取る。
今回の相棒は、SUZUKIのSOLIO。

普段あまり見かけないカラーが、非日常感を演出していて良い。

最初は私がハンドルを握る。

楽しい旅の始まり。

……のはずだった。

「運転がふらついていて怖い」

妻からの率直な意見。

連日の仕事で疲れているのではないかと心配してくれているのだろうが、正直、気持ちは凹む。

自分ではまだ大丈夫と思っていても、身体は正直なのかもしれない。

途中のローソンで、妻の栄養補給担当、メガホットカフェラテを購入。

そして、妻に運転を交代する。

無理をしてまで運転する必要はない。

無理をしてまで旅行を続ける必要もない。

二人で出かける旅なのだから、安全第一でいこう。

自分の体調を認めて、任せるところは任せる。

それも、今回の旅で必要なことなのかもしれない。

■ 『呪術廻戦』展と芸術に触れる時間

10:32

岩手県立美術館に到着。

今回のお目当ての一つ、企画展「芥見下々『呪術廻戦』展」。

数年前、妻とのドライブ旅行中にアニメを見たのが、この作品との出会いだった。

そんな思い出もあり、展示を楽しみにしていた。

作品の世界に浸りながら、展示を巡る。

フォトスポットでは記念撮影もしてもらった。

ところが、撮ってもらった写真を見て、自分の顔に嫌悪感。

これは……呪霊だな。

少し格好良くしたつもりだったのだが、正直、気持ち悪い。

どうせ呪霊になるのなら、見た目だけではなく、何か特異な能力も欲しいところ。

せめて、仕事を一瞬で片付けられる能力があれば……。

いや、それでは結局、旅行中まで仕事をしてしまうか。

企画展のあとは常設展へ。

澤田哲郎の油絵、舟越保武の彫像など、さまざまな作品を鑑賞する。

作品を眺めながら、自分の心がどう動くのかを感じる時間。

普段の生活では、仕事の課題やメールの返信など、目の前の処理に追われている。

何かを見ても、何かを考えても、すぐに結論を出そうとしてしまう。

けれど、芸術作品は違う。

正解を出す必要もなければ、すぐに答えを出す必要もない。

ただ眺め、感じ、自分の心の動きを確かめる。

そんな時間も大切なのだと思う。

美術館のカフェにも立ち寄ろう。

予約優先で待ち時間があるようなので、一度は諦めることにした。

ところが、予約者が来なかったためか、入れそうな様子。

せっかくだから入ろうか。

……と思ったものの、妻の体調があまり良くない。

今回は見送ることにした。

車に戻り、妻が薬を飲んでひと休み。

今回の旅は、予定をすべてこなすことが目的ではない。

気ままな二人旅なのだから、体調に合わせて予定を変えればいい。

予定を変更することも、旅の楽しみ方の一つ。

焦らず、無理せず、二人のペースで進もう。

■ 盛岡で出会った、おいしいお昼ごはん

車に乗り込み、事前に調べておいた昼食のお店へ向かう。

到着間際、賑わっているお店を通り過ぎた。

目的地に着いてみると、駐車場には車が一台もない。

営業はしているようだけれど……。

妻の意見もあり、ここは見送ることにした。

それなら、先ほど通り過ぎた賑わっているお店にしよう。

13:15

「鮨処 大漁」に到着。

店内は満席。

準備ができるまで待つことになった。

妻はまだ本調子ではなく、車の中で横になって休む。

しばらくして、ようやく入店。

注文したのは大漁ランチ。

私は銀花丼、妻はちらし寿司をいただく。

新鮮な海鮮の味わいもさることながら、特に印象に残ったのはご飯だった。

一般的な酢飯とは少し違い、塩気が感じられる。

お米もふっくらしていて、魚との相性がいい。

こういう、実際に食べてみないと分からない発見があるから、旅先での食事は楽しい。

おいしい食事をいただき、お腹が満たされる。

すると不思議なもので、気持ちまで穏やかになってくる。

さっきまで体調を気にしていた妻も、少し落ち着いた様子。

お腹が満たされると、心にも余裕が生まれるのかもしれない。

ごちそうさまでした。

■ 山道を進んで温泉郷へ

食事のあとは、八幡平へ向けて車を走らせる。

街中を離れ、静かな山道へ。

窓の外には、岩手の山々が広がっていく。

そういえば、昨年2025年は日本各地でクマの出没が大きな話題になっていた。

今年はあまり情報を聞かない気がするが、山の実りが豊かなのだろうか。

そんなことを車中で会話しながら、ゆっくりと進んでいく。

途中でドラッグストアを見つけたら寄ろうね、とも話す。

観光の話だけでなく、日用品の買い物も旅の会話になる。

特別なことばかりでなく、こういう何気ない時間も二人旅の良さなのだろう。

15:15

今日の宿、「八幡平ハイツ」に到着。

玄関前までスタッフの方が出てきて、荷物を運ぼうとしてくださった。

こちらがお願いする前に気づいて動いてくれる。

ホテルの配慮と体制に感動する。

チェックインを済ませ、客室へ。

今日お世話になるのは和室。

ベランダには、客室専用の露天風呂が付いている。

部屋に入った途端、私はどっと疲れが出てきた。

妻がさっそく露天風呂にお湯を張ってみたものの、どうやら熱すぎて入れないらしい。

それでも、温泉の香りを感じた妻は、少し元気になったようだった。

まだお湯に入れていないのに、温泉の雰囲気だけでも気分が変わるものなのだろうか。

いや、楽しみにしていた場所に到着したこと自体が嬉しいのかもしれない。

■ 秋晴れの八幡平を散策

16:00
元気を取り戻した妻と二人、
宿の周辺を散策することにした。

気温15℃。
快晴続きで天候に恵まれた。
空気が澄んでいるように感じられるのは山だからだろうか。

歩いていると、
「八幡平秘密基地WAN」というドッグラン・キャンプ場を見つけた。

…秘密基地。
なんとも魅力的で素敵な名前。
実際にどんな場所なのか。
名付けた人や経緯、
そんなことまで気になってしまう。

さらに歩いて、橋上から松川渓谷を眺める。

眼下には、
およそ20メートルほどの高低差。

景色は見事なのだが、
高いところが得意というわけでもない二人は、思わず足がすくむ。
…吊り橋効果もあったかもしれない。

自然の雄大さを感じると同時に、
自分の小ささも感じる。

普段は仕事の問題に頭を悩ませ、
何とかしなければと考えてばかり。

山や渓谷を目の前にすると、
自分ではどうにもできないほど
大きな存在を改めて気づかされる。

自分一人で
何もかも背負い込む必要はない。
頭では分かっているつもりでも、
こういう場所に来ると、少しだけ実感できる気がする。

16:45
ホテルに戻る。

お土産コーナーを少し物色してから、部屋へ。
そして、私は畳の上に倒れ込む。

…疲れた。
とにかく全身が疲れた。

普段の疲れは、
どちらかといえば心の疲れだ。
仕事のことを考え、
先のことを心配し、
あれもこれも何とかしようとする。

けれど、今日は違う。
頭も、腕も、足も疲れている。
心だけでなく、身体まで
しっかり疲れている。
気持ちの良い疲れだ。

■ 幸せ者の認識
畳の上で横になっている間、
妻は客室の露天風呂へ。

しばらくすると、妻の声が耳に入る。

「私は幸せ者じゃ~」
「私は幸せ者じゃ~」
何度も繰り返す、そのつぶやき。

ホテルとお風呂に満足して頂けたようで良かった。

その声を聞いているうちに、
私も幸せ者の自覚が芽生える。
少し元気になってきた。

せっかく温泉に来たのに、
ずっと畳の上で倒れているのはもったいない。
身体は疲れているけれど、
私も大浴場へ行こう。

17:20
大浴場へ。
まずは身体を洗い、
いつもより丁寧に身体を揉みほぐす。
足裏、ふくらはぎ、二の腕……。

普段、身体がそこにあることを、
私はどれほど意識しているだろうか。

頭ではあれこれ考えているのに、
身体そのものには
案外無頓着。

自分の身体に触れ、
筋肉の張りを感じ、
揉めば反応が返ってくる。
そんな当たり前のことを、
改めて感じる。

屋内の岩風呂に浸かり、
露天の檜風呂にも入る。

少しずつ身体がほぐれていく。

温泉は、
疲れを一瞬で消してくれる魔法ではない。
それでも、疲れた自分をいたわる時間にはなる。
十分に価値がある魔法だ。

■ 岩手の味覚と地ビール
18:00
夕食会場の大ホール「瑞雲」へ。

楽しみにしていた夕食。
メインは岩手が誇るブランド牛、前沢牛と岩手県産牛のしゃぶしゃぶ。

二つの牛肉の味わいを楽しみながら、山の幸や海の幸を盛り込んだ創作和食膳をいただく。

おいしい。

お腹も心も満たされる。

万全ではない妻は途中でリタイア。
それでも、旅先の食事を二人で満喫できたのは嬉しい。

夕食後は、お土産コーナーで八幡平の地ビールを購入。
DRAGONEYE SKY
DRAGONEYE MAGMA

部屋に戻ると、
すでに布団が敷かれていた。
ホテルのサービスに感謝。

妻は客室の露天風呂へ。
私は部屋で地ビールを飲み比べる。

SKYは酸味と軽さ
MAGMAは苦味と重さ

地ビールの個性を感じながら、
ぼんやりと過ごす夜。

何かを調べたり、
業務のことを悩んだり、
仕事のメールを気にしたりすることもない。
テレビを見たりスマホ記事を読むこともない。
ただ、振り返りの時間。

普段の生活ではなかなか得れてない時間。

今日はもう、
仕事をする気にはなれない。
週明けには、きっと慌てることになる。
それでも、今夜は仕方がないことにしておこう。

頭の片隅には、まだ仕事のことが残っている。
それでもいつもより少しだけ距離を置けている気がする。

心も
旅を楽しめる状態に戻ってきた。
妻も楽しんでくれているなら、
来た甲斐があった。

明日の詳細予定はまだ決めていない。
いつだって成り行き任せなんだ。
まだ知らない土地を訪れる楽しみは、旅の前だけでなく、旅の途中にもある。

明日も無理をせずに楽しもう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA