■旅の朝はまだ眠りたい
3:00
妻が動いている気配がする。
どうやら蚊がいるらしい。
私は寝たまま。
6:00
起きたくない気持ちが溢れてくる。
楽しい旅行のはずなのに、
現実を受け止めたくない。
身体からは汗が出ている。
それなのに、肌寒くも感じる。
身体も心も、
まだ目覚めたくないようだ。
7:00
外はすっかり明るく、空は晴れている。
今日も快晴だ。
気温は8℃。
愛知とは10℃ほどの温度差がある。
朝の冷たい空気を感じながら、書き物をする。
旅行に来ても、
こうして何かを書いている。
何もせずに過ごすというのは、
今の私には難易度が高い。
■朝風呂で身体を目覚めさせる
7:30
大浴場へ
冷えた身体をシャワーで温めてから、湯に浸かる。
弱酸性の単純硫黄温泉。
岩風呂、檜風呂、壺風呂。
湯に浸かりながら、
手首を動かすトレーニングもする。
身体の芯まで温泉熱は浸透していく。
8:00~8:30
大ホール「瑞雲」での朝食。
バイキング形式。
賑やかな明るい空間。
朝からしっかり食べた。
お腹がはち切れそうになるまで。
8:30
客室で身体を休めてから
再び温泉を楽しむ。
露天の檜風呂で身体をほぐす。
手拭いで身体を拭き、
目を押さえると、
ひんやりして気持ちがいい。
屋内の岩風呂。
手拭いで目隠しをして、
アイマスクのようにして入湯する。
目を閉じるのとは、
視覚がない分、
触覚、嗅覚、聴覚で温泉を感じる。
湯の感触、温泉の香り、周囲の音。
いつもとは違う温泉の楽しみ方だ。
9:30
部屋に戻り、
荷物をまとめる。
10:00
名残惜しいがチェックアウト。
妻の喜んでくれた顔が、
旅の満足度を上げる。
今でも妻は体調不良だが
実は先週まで今回の旅行に参加するか悩んでいたらしい。
それでも、
こうして一緒に来ることが出来たのは
本当に良かった。
このまま温泉効果で回復に繋がれば
尚良い。
一緒に来た人が楽しんでくれること。
その時間を共有できるのは
私自身も楽しくなれる。
■焼走り溶岩流 黒の世界
10:30
焼走り溶岩流駐車場に到着。
1732年噴火の溶岩遊歩道を体験したい。
ここから登山口に入った。
歩き始めると、
周囲の雑音が消えていく。
自然の中を歩く時間は、
普段の生活とは違う感覚がある。
土を踏む足裏の手応え。
ただ、
途中ですれ違う人たちの登山装備が、どうにも気になる。
熊鈴、ステッキ、リュック…
対して我々は手ぶらの軽装。
…違和感。
この道、
もしかして山頂まで続く一本道なのでは?
地図を確認して確信する。
戻ろう。
11:05
再び焼走り駐車場に戻る。
妻は体力の限界とのことで、
車内で休息集中モード。
ここからは一人で行動する。
階段を登り1分も経たないすぐそこに
目的地はあった。
黒の世界。
一面に広がる溶岩の景色。
普段の生活では、
なかなか目にすることのない風景。
黒の世界を、自分の足で歩いていく。
足元は決して歩きやすくない。
それでも
目の前に広がる景色は新鮮で
興味を引かれる。
所々、松の木が島のように黒の海から生えている。
生命は逞しい。
11:50
黒の世界を抜け、
舗装された平坦な道。
足場の悪い道を歩いたことで、
足はすでに疲弊している。
心は普段にはない経験に踊っている。
展望台から、
歩いてきた黒の世界を振り返る。
通り過ぎれば
苦難も霞んで見える。
人生と同じだ。
歩いてよかった。
予定どおりに進まなくても、
思いがけない経験が残る。
12:05
焼走り溶岩流駐車場に帰着。
■偉人の人間性
休んでいた妻を起こして
車を運転する。
石川啄木ゆかりの地を通り過ぎた。
妻と啄木について話をする。
啄木の詩は良い。
人間性となると共感できない。
偉人と呼ばれる人でも、
後世に伝えられるのは、
その人生から切り取られた一部分。
人生のすべてが立派だったわけではないだろう。
もちろん、
この土地に暮らす人たちが啄木を推すことは、悪いことではない。
地元にゆかりのある人物を大切にする。
その土地の誇りとして語り継ぐ。
それは、それで良いことだと思う。
人の評価は、一つの側面だけでは決められない。
そんなことを考えながら、車を走らせる。
12:40
カフェ・ピッツェリア ヴィラに到着。
目的地の昼食処。
かわいらしい外装とキャラクターが
目に入る。
店内はアメリカンスタイル。
※アメリカに行ったことはないけれど。
バイクが置かれていたり、
コミックコーナーがあったりと、
独特の雰囲気がある。
近所にあったなら常連になりそうだ。
注文したのはヴィラセット3,300円。
ドリンクセットが330円×2。
私のドリンクは「初恋ソーダ」。
小学生くらいの初恋感。
店内に置いてあった漫画を手に取る。
ヤマザキマリさんの
スティーブ・ジョブズの伝記漫画だ。
ジョブズも幼少期は悪い子供だったらしい。
先ほど話していた石川啄木とラップする。
賢いことや
才能があることが
人間として欠点がないことは別の話。
誰にでも良い面と悪い面がある。
偉人の人生も一部分だけでなく、
いろいろな側面から見ると面白い。
■国道396号を走り、遠野へ
13:30
ここからも私が運転する。
国道396号を走る。
信号は数えるほどしかない。
しかも、その信号のほとんどが青。
快適だが少し物足りない。
妻は隣で眠っているので
低音量でラジオをつける。
流れてくるのは岩手で行われているトヨタのイベントの話。
知らない土地のラジオ情報。
愛知での感覚でいると時々混乱する。
それも面白い。
■旅のメインミッション
15:20
遠野ショッピングセンターとぴあの
立体駐車場に車を停め、
徒歩で行動する。
街もそうだが
とぴあも進化が見られた。
中央の吹き抜けには
大型の子供用遊具が登場。
15:30
遠野市観光協会。
ボードゲームカフェ BOBはイベントの真っ最中。
休み所を探して
妻との意見の衝突。
というか意見の食い違い。
喫茶店に行くこと
と
早く水分補給と小休止
には違いがある。
私は
妻の体調を気遣っているつもりで
弱っている妻を振り回している。
15:35
喫茶待月
ここでブレイクタイム。
温かい紅茶の甘さと香りが、
妻の元気を取り戻してくれる。
良かった。
私は店内に置いてあった知恵の輪にも挑戦。
難しい…。
解けそうで、解けない。
あと少しで解けそうなのに、
ちょっとしたところで引っかかる。
焦って動かしても、うまくいかない。
無理やり力技で外したくなる…
人間関係も
知恵の輪に似ている。
相手の気持ちを決めつけたり、
自分の考えだけで動いたりすると、
かえって絡まってしまう。
楽しい旅行だからといって、
ずっと楽しい気持ちでいられない。
すれ違うこともある。
それでも維持と復旧が出来る配慮を心がけたい。
16:05
遠野市観光協会。
カッパ捕獲許可証を更新する。
これが今回のメインミッション。
今回で、17年目の更新となる。
こうして考えると、
遠野との付き合いも長くなった。
当初はここほどまで来る場所だとは思ってなかった。
連続してこれているのも
カッパ捕獲許可証の影響は大きい。
カッパ捕獲許可証には嬉しい特典がある。
5年連続更新してゴールド免許になると観光協会でのお土産購入が5%割引になる。
今回も迷わずお土産を購入。
12,000円。
さらに今の期間はPayPayクーポンで20%分のポイントがつくという。
ありがたいサプライズ。
これで今回のミッション、
そして今年のミッションは終わった。
あとは夕食探しながら街歩き。
入店しようとしたところは予約いっぱいで入れず、
とぴあ内のキクコーストアで弁当を購入する。
加えて日常の買い物、お米や果物を買う。
旅先で生活に関わる食材を買うのも、面白い。
家で食べるとき、
今回の旅行を思い出すこともあるだろう。
17:50
遠野ユースホステルにチェックイン。
1泊朝食付き、1人5,720円。
二段ベッドの部屋。
荷物を部屋に運び入れ、
自分でベッドシーツをセットする。
18:20
食堂で弁当を夕食にいただく。
缶ビールを2本。
妻は体調が良くないため、
食事は控えめ。
先に休む準備に入る。
私は食堂に残り
食堂で同じく夕食をとられていた方と話をすることにした。
77歳、富山から来た旅人から
今回の旅行内容や
これまでの仕事の話を聞かせてもらう。
私も仕事で共通する話題もある。
ただ今日の会話は仕事の打ち合わせではない。
知らない人との、旅先での何気ない会話。
責任を伴わない話だからこそ、
気楽に話せる。
若い頃の私だったら
出会いを仕事につなげようと
連絡先を聞くことに一生懸命になっていたかもしれない。
何かに活かせないか。
何かにつながらないか。
今の私は連絡先を聞こうとはしない。
今日ここで話をした。
それで十分。
何かの役に立てなくてもいい。
仕事につながらなくてもいい。
少しだけ世界が広がる。
21:00
2階で恒例のティータイムイベント。
宿泊客4名と、店主ご夫婦2名。
合わせて6名での団欒。
たわいのない話。
知らない人の話を聞いたりする時間が、旅の思い出になっていく。
今日一日を振り返ると
いろいろなことがあった。
妻との気持ちのすれ違いもあった。
落ち着くことができれば
また一緒に話せれる。
旅先で知らない人と出会い
仕事とは関係のない時間を過ごすこともできた。
予定どおりに進まないこともある。
疲れてしまうこともある。
自分の思い込みで、相手を振り回してしまうこともある。
それでも、一日が終わる頃には、こうして穏やかな時間を過ごせている。
明日の午後は愛知に帰る。
日常生活に戻るカウントダウンは始まるがまだ実感はない。
いつだって成り行き任せなんだ。
明日も無理をせずに楽しもう。
